なんでこんなことするの?
これから一生自分に問いかけ続けなくちゃいけない。

僕は前の正社員の仕事を辞めて今パン屋さんでアルバイトを始めたところだ。なんでパン屋さんで働きてるかって、来年百瀬とハンバーガーを始めるまでの修行なんだ。

「へえ、いいね。」

「できたら行くよ!」


そういう声ばかり。
悪い気持ちもしないが別になんとも思ってないんだと思う。

僕もあんまりなにも思っていない。

自分がこれからやろうとしてることに、すごいだろ?おれはやるんだ。とか思ってる。


でもあまりにも僕はまだ無知過ぎる。
今日、ズバズバと言われて、それを素直に受け止めて、そりゃあ凹んで。

「他人に自分の夢押し付けちゃダメだよ」

ってごもっともなのに。
そうしてたよね。
それを言い訳の理由にしてた。
もしその言い訳がなかったら僕はなぜ百瀬と一緒にやるのか。自分でもよくわかっていない。


今年に入ってなぜだか勢い付いて百瀬と来年一緒に会社やろうと思い仕事を辞めると言い出して。

もうこれしかない。これしかない。
おれはなにやってもダメなんだ。もうこれしかない。一か八か。いや百瀬とならなんとかなる気がする。失敗しても大丈夫。
だから今、一度人生を賭けるしかない。
なんて思ったのかも。

百瀬がやろうとしてることがかっこよく見えて、おれもかっこよくなりたくて。「待って!それおれもやる!」なんてそういう感じか。


僕は一度人生を賭けたことがある。
と言っていいのかな。
今思えば、あの時、挑戦していた。
たった短い間だったけど、アシスタントデザイナーをやっていた時。たった3ヶ月くらいか。
辛い時期があった。
たまたま話がかかったものだった。
そのチャンスに乗った。このワンシーズンでおれは成功すると思っていた。
すごい機会が設けられていた。
アシスタントデザイナーになってからメインデザイナーさんの想像したものを僕が縫い上げて形にしていった。
メインデザイナーの話や参考ビジュアルをもらってそれを生地のグラフィックに落とし込んだ。たった3ヶ月ほどだったと思う。入った途端から初めてやることばかり。縫う技術もあげて、感性はメインデザイナーさんと合わせて、短期間でぐんぐん成長していたと思う。
展示会の日の朝まで服を作り続けた。
出来上がっていなかったから。僕は最後眠ってしまった。メインデザイナーさんが慣れないミシンを踏んだんだと思う。
服が完成してそのままデザイナーさんの運転で表参道へ。
伊勢丹のバイヤーさんの前とかで展示会をしたんだ。
それが最初で最後の僕のコレクション。

きっとメインデザイナーさんこのワンシーズンに賭けていた。もちろん僕も賭けていた。でもメインデザイナーさんにしかわからないきっと財政状況とかもあって、そのシーズン契約がつかなくて、多分あれはメインデザイナーさんの配慮だったんだと思う。僕はクビになった。

メインデザイナーは尊敬できる人だった。
僕は物事の考え方、瞑想、精神力、いろんなことを教わった。
辛く、やりがいの日々だった。
ただやりたいことをやっていたはずなのに次第に辛いだけしかなくて、意地でやっていて、本当になにが幸せなのかわからなくなっていた。報われてなんてなかったらからだと思う。
これが幸せなら僕は違うかも。そんなこと思っていた。

だから、朝いつも通りアトリエに行って、「今日は大切な話があります」と切り出されて「みーくんは今日で最後です」と言われた時、泣きながらホッとしたんだ。
終わったと思った。終わったんだって。

きっとおれの幸せは違うってメインデザイナーさんはそう思ったんだと思う。

おれもその時、終わった、よかったと思ってしまったんだもの。

おれは何者になりたいんだ。
デザイナー時代、仕事ばかりして自由な時間もなくて毎日が過ぎて、これで幸せなのか?と思った。

それが前に一度賭けたことがあるときの答えだった。



僕はこの前の家族旅行が、それは涙が出るほど良いものだったと思ったんだよ。ずっと気付くこともなかった父の気持ちを知れたことが1番嬉しかったのかな。
あの日4人で撮った写真、それを見て、おれもこんな家族が欲しいとその時初めて思った。おれだけが家族で繋がっていなかったかも知れないけど、やっとおれはそう思えた。嬉しくて泣いた。


こんな家族が欲しい、こんな家庭が欲しい。そう思った時におれはまた人生を賭けてなにか始めようとしている。

本当にこれで良いのだろうか。
これがおれの本当に望む幸せに繋がっているのだろうか。

もうそんなことはわからない。

でも何度だってそんな思いがサイクルするんだよ。おれこのまま行って大丈夫なのかな?大丈夫なんだよな。
なんとなく全然不安はないんだ。ないんだけどこれはなにをもって幸せと言えるのか、どこがゴールなのか、いやゴールなんて死ぬまで続いてて、その中で僕は普通の幸せを手に入れることはできるのだろうか。やっぱり大好きな人たちがいて。
それは家族だったり友達で。そういう人が僕にはたくさんいる。
勝手に成功して友達にも幸せな気持ちを分けたいだとか思ってたりするけど、もし失敗したって誰も助けてやくれないし誰もそんなこと望んでいないのに。
なんでなんでなんで、どうして僕はそうするの。


いろんなこと言われて、友達はみんな僕のことを思っていってくれるから、「百瀬はそんなに信頼できるやつなのか?」とかよく言われる。僕はそれを相手の納得行く言葉で返してやることができない。
でもいろんなこと言われてなぜだか大丈夫な気で、まだ引き下がる気にはならないんだ。いや本当に馬鹿だよ。
自分でもこいつとなら大丈夫なんて確信なんて知らないんだから。怖いよ怖いよ怖いよ。

今日は色々言われちまったんだ。

その言葉ありがたく受け止めて、
僕はまだ立ち向かうことにするよ。

本当にそれはなぜなのか。

いやもう、今すぐ幸せになりたいよ。
やっぱりなんでこんなことしようと思ってるのとか思うよ。


神様、神様、

いけるかな、
光の射す場所へ。


お願いだよ。
ただ幸せになりたいだけ。
幸せになれればなんだっていい。


なにでなにしたいとかおれにはわからないよ。なにもしたくないし大切な人をずっと守りたい。


できないなら早くおれなんて死んでくれ〜