この前行ったカラオケで、僕がトイレで踏ん張っていると目の前にポスターが貼ってあった。
どこのどいつかも知らない、高校生くらいのヘタレバンドだと思った。

真ん中の金髪のやつ、なんか見たことある。


気になって載っていたホームページでプロフィールを見るとやっぱりだった。

知っているけど知らない。友達の友達。

前に他のバンドを組んでいる時に見た。青春パンクなんだろうか。僕は青春パンクは好きだけどその人の歌はいいとは思わなかった。なんとなくその人が嫌だったから。
歌っている歌詞はすべて嘘に聞こえた。なにを思って歌っていたのだろう。

僕はその人のことをよく知らない。




そのバンドが解散して、また他のバンドを組んだんだろう。
その人には他になにもないのかな。ないのかと思う。けれど1つある。
きっとそれがその人の夢なんだと思う。
それを僕は羨ましく思う。その人は好きになれなくてもその生き方を羨ましく思う。

トイレの中で思った。








夢は追い掛けていれば叶うもの?

夢を追い掛けることは怖いものなんだと思ってる。


小さい頃、
小学校、中学校と卒アルに「将来の夢」を書く時に必ず悩んだ。
夢なんてなかった。夢ってなに?いつになったらできるの?
少し大人になったら夢ができるんだと思ってた。

僕には夢がなくて、悩んで悩んで、面白いことを書こうとした。

その頃の同じ学校だった子たちが書いた、先生だとか、建築士だとか、小説家、パイロット、総理大臣、スポーツ選手、有名人、大工、歌手、ドラえもんん作る、ゲームクリエイター、ペットショップ、イラストレーター、海上自衛隊、プログラマー、億万長者、


みんな夢に手が届いているのだろうか。その夢に向かってなにかしているのだろうか。

面白いこと書いたつもりだったけど僕の書いた夢には「もうかる仕事」と書いてあった。
なんてつまらない。だけど僕と同じように夢のない人はたくさんいると思う。

夢見る人を羨ましく思うのに、なぜ自分も夢を見ようとしないのか。見えないんだものしょうがない。
じゃあ僕はなんのために生まれて来たんだろう。





あの時、面白いことを書いたつもりでいたあの時の僕が言う。

「もうかる仕事に就いていますか?」





もうかる?この仕事に就いた時、もうかるだとかなんも考えていなかったよ。正直どんな仕事なのかもわかんなかった。
とりあえず早く内定が欲しかった。

2、3年経ったらどうせ仕事辞めるべ?この会社にずっといる気はない。なんて友達と話してた。

そうだなー。

少し流されながらそう思ってた。ほとんどは何も考えていなかった。


仕事に就いた。


もうかる?
もうかる仕事ではないよ。楽しくもないよ。でもこれが社会人。社会人?

社会人。
社会人なんて簡単だなぁ。バイトと大して変わらない。段々慣れて、同じことを繰り返していく。
毎朝起きて、毎日それを繰り返す。

2、3年したら仕事辞めるの?なんで?
なんで?最初からそう思っているなら今やめてもいいじゃん。じゃあ今辞める?

今辞めてどうするの?辞めてなにするの?なんのために辞めるの?



じゃあ理由なんてないからやめないよ。

じゃあいつか理由を作って辞めよう。


いつか?
じゃあ2、3年後。
2、3年後に理由を作って辞めるよ。

理由って?

まだわからない。
夢じゃなくてもなにかやりたいことを見つけて。


辞めなくてもいいんじゃない?
やめなくていいならやめないよ。








10年後までにはなにかを見つけよう。見つけたい。

見つけて、叶えるまで生きる意味があるんだ。
そうなのかな。




なにか見つけよう。
小学生の時から今まで見つけられなかったなにかも。これからの10年間で。




風鈴の音が聞こえる。
今日も蒸し暑いから窓を開けて寝よう。