8月1日

夏が来ました。神奈川県にも梅雨明けが発表され夏が来ました。


いよいよ夏本番です。






8月1日、今日は花火大会。もう一年前のこと。ドキドキしていたのは一年前のこと。





2時に起床。なんだか清々しかった。なんともいえない気持ちだった。ちょっぴりドキドキしていた。女の子とではないが花火大会に行くつもりだった。8時くらいからかなって思ってた。


5時から久しぶりにバンドでスタジオに入った。2時間。終わったのは7時。友達からメールが来て花火大会が7時15分からと言うことを知った。





もう間に合わない。なんだかすごくやるせない気持ちになった。花火大会に行くことに僕にどんないいことがあるのだろう。そんなに花火が見たかったのか。

そうじゃない。なんで僕が行きたかったのか。それがわかった。

きっと8月1日だから。去年のことがあったから。それだから。今年あの娘は彼氏さんと浴衣姿で花火を見たんだろう。でもそんなの関係ない。僕は去年を思い出したかったのだろう。なんでだろう。どうしても。





僕はやるせなくなった。友達が「花火大会行くの?」と聞いてきた。

『でももう始まってるよ』

「行くなら行くよ」



友達がそう言ってくれた。僕の気持ちなんて知らないだろう。着いた頃には終わってるだろうになんの意味があるのだろう。





そして行くことになった。





電車で30分はかかるかな。電車なんてめんどくさかった。原付でもそんなに変わりはない。桜木町までの道もよくわからないのに走り始めた。



国道16号線をひたすらまっすぐ。時々Uターンして。なんとかなるべ、とただ目の前にある道を走った。





都会に近づく。浴衣を着た女の子が歩いていた。なんとなくもうすぐなのかとテンションがあがる。






しばらくすると真っ暗な空に光が見えた。音も聞こえるようになった。横浜スタジオを通り過ぎる。前にいた単車の後ろには浴衣を着た女の子。




見たことのある建物が見え始める。




桜木町に着いた。

人が大勢いる。原付を止めて立ち止まる。目の前に大きな花火。間に合った。なんだか嬉しくて仕方がない。本当はこの場所に来たかっただけ。見たかったのは花火じゃない。

この人混み。この空気。賑やかな感じ。桜木町の街並み。



思い出したかった。去年にまた会いたかった。来たかったのはきっとそれだけなんだと思う。そしてこのどこかであの娘は嬉しそうに花火を見ているのかな。浴衣姿のあの娘はどんなにかわいいのだろう。花火を見てどんな笑顔を彼氏さんに見せてあげるのだろう。


なんとなく去年のことを思い出しながら、あの娘のことを考える。










僕は興奮して花火を写真で撮ろうとケータイのカメラを起動させた。花火を見始めてから3発ほどで花火があがらなくなった。僕は次の花火はいつかと期待してケータイを片手に待っていた。







あがらない。終わってしまったようだった。周りの人たちが移動し始める。着いて1分ほどで花火は終わった。3発ほど見た。



でも全然悔しくはなかった。少し見れただけで僕はよかった。







自分でもなにをしたかったのかよくわからない。でもあの空間にいれただけで満足だった。

花火大会を終えて駅に向かう人混み。桜木町。警察が警備をしていた。うちわを扇ぐ浴衣の女の子。花火の余韻に浸り芝生の上で楽しそうに話す恋人たち。暗い道を明るい電灯が照らしている。大きな観覧車は花火のように光っている。お月様だって負けないくらい光っている。


同じだった。だから思い起こすことができた。ただただ浸りたかった。あの空間。思い出したいから思い起こす。鮮明に。







なにも悔しいことなんてなかった。僕はなにかに酔いしれることができた。なんとなく幸せだった。目に映るすべての光景が。

思い出して仕方なかったのはあの娘が急に裸足で歩き始めた時のこと。


残像を見た。瞼の裏で。










夢で逢えたら。今夜夢で逢えたら醒めなくてもいい。もうずっと。

記憶に閉じこめられても。





あぁ。









夏が暑くなり始めた。


8月1日
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