一瞬だった。ほんの一瞬だった。
あの娘を待っていて、あの娘が現れて、それで貸していたDVDを受け取って。
もう夜の9時。「どっかいく?」なんて遊びにだって誘えなかった。だってあの娘は明日も学校。忙しいんだ。警察官になるために勉強してる。
だから、だから、DVDを受け取って、どうしよっかってなって、「じゃあまた今度!」って。
ホントになにもない一瞬。
だけどね、僕はあの娘が来る前にあの娘にプレゼントを用意した。なんで。会うだけで終わってしまうなんて寂しいから。喜ぶ顔が見たいから。
それだけなのかな。忘れて欲しくないからかな。だから形に残るようなものをプレゼントしたのかな。
なんでもいいんだ。あの娘は純粋だから素直に喜んでくれた。中身も見てないのに紙袋渡されただけでニコニコになって「あけてもいい?」なんて聞いてきた。
卒業式に渡した誕生日プレゼントの時と同じだった。
喜ぶ顔が見たいにも関わらず僕は「開けちゃだめ!」と言う。
あの娘は子供のように純粋でかわいらしい。
それで、それでもってお別れした。ホントに一瞬だった。たった10分くらいの空間だった。
でもなんだか嬉しかった。気持ちがやわらかくなった。ふわふわした。あの娘を待っている時はやっぱりドキドキした。
帰りの電車に揺られている時にあの娘からメールが来た。
「受験が終わったら今度ゆっくり話しましょ!」なんて。
そうだね。嬉しいよ。受験頑張って。
好きという感情はもうなくなったのかもしれない。あの娘の幸せを願えるようになった気がする。きっと大切な人になったんだ。
あの娘に負けないかわいらしい女の子を見つける。
恋をする。
BGM♪
銀河鉄道の夜/GOING STEADY